60年代のテープレコーダー3(年金フル世代の子供の頃)
7月 25, 2018
前回の最後に述べたように当時憧れのテープデッキであるティアックA-6010が高校の音楽室に設置された事で、これを使いたい事もあり文化祭の催しとして丁度3カ月程前に見たオーディオフェア―での生演奏と録音の聞き比べをパクったものをやる事になった。文化祭の音楽系の出しものと言えば当時流行りのフォークソングやロック系のライブが多い中で、演奏と録音の聞き比べというのは異質だっが、意外にも関心は高く、当時は教師まで含めて本気で聞いてくれたのには驚いた。この時の演奏はクラシックギターをやっているヤツを引っ張り出して、これを録音したものとの聞き比べなどをやったのを覚えている。
4トラックとはいえ流石は高級デッキであり、結構な音質で録音出来ていたのも事実で、これを聞いた音楽教師が自分が指導しているコーラス部の練習を録音して、その場で聞きながら部員皆でチェックできるから、これは良いぞと言い出して、まあ文化祭の時に機材を借りた弱みもあるので放課後にコーラス部の練習に付き合う羽目になってしまった。
ところで、テープレコーダーとテープデッキは如何違うかと言えば、テープレコーダーはそれ自身にアンプとスピーカーを備えていて単体で音がでるのだが、テープデッキは出力をオーディオアンプに入力して、それに繋がるオーディオスピーカーから音を出すという違いがある。それで音楽室にあったオーディオ装置はアンプがソニーの結構高級品であり、スピーカーは広い音楽室用に三菱の小型モニター (16cmフルレンジ) を片側に20個くらい組み込んだ大型のボックスが左右に設置されているという結構な設備があったのも、聞き比べが上手くいった原因だった。
それにしても同じ60年代でも、初期のテープレコーダーと後期のステレオテープデッキの性能差は相当なものがあった事になる。なおティアックA-6010の価格は1968年当時で約16万円で、同年のホンダN360(エヌサン)が32万円だったから、軽とは言え自動車の半額もしたのだった。
さてここでA-6010の複雑なテープパスについて少し説明をしておくと、写真左下で供給側リールから出たテープは①のインピーダンスローラーと呼ばれる部分で回転むらを吸収される。これは重いフライホイールが筺体内部に入っていて、この慣性によってテープの走行を安定させている。②はキャプスタンで、専用モーターにより駆動されていて、これを③のピンチローラーで挟む事によってテープが走行する。そして④はテンションアームで多少の送りムラを吸収する。という具合にテープの走行を安定させるために多くの部品を使用していて、伊達に高価は訳では無いというのが判る。
ところでこのA-6010は何を隠そう当時世界の録音スタジオでスタンダードとなっていた米国アンペックス社のテープデッキをパクッたものである事が判る。なぁ~んだ、そうだったのか!
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