大型車のタイヤ脱落事故が増えているのは何故か?

1月 15, 2022 0 投稿者: B_Otaku

 

既に報道されているように12日午後0時半頃、群馬県渋川市の国道で走行中のダンプカーからタイヤ2本が外れ、このうち1本が歩道を歩いていた男性を直撃した。

下の動画でも2本のタイヤが道路上を転がっている状況が判る。

それにしても後輪のダブルタイヤが2本とも外れているが、大型のダブルタイヤって確か内側と外側を別々のナットで止めた覚えがあるが、下の写真を見ても2本とも外れていて、しかもボルトは折れていないようだ。

調べてみたらば最近、大型車のタイヤの装着方法が変わっていたのだった。以前は日本独自のJIS方式だったが、これが国際基準の新ISO(国際標準化機構)方式に変更されていたのだった。

これについては自動車工業会の資料に詳しく出ているので、詳細を知りたい読者は是非目を通していただきたい。
「車輪脱落防止のための正しい車輪の取り扱いについて」

なお、ここで一番重要な点のみ纏めると、従来のJIS方式ではインナー(内側)ホイールとアウター(外側)ホイールを別のナットで締め付けていたが、新ISO方式では2つのホイールを1つのナットで共締めするという点で、大きく異なっている。

今回の事故車も新ISO方式のようで、成程2つのホイール(+タイヤ)が同時に外れた理由が判った。

自動車は世界的に規格を統一する動ぎはハーモナイズと呼ばれ以前から地道に行われてきた。大型車のホイール装着方法もJIS方式は日本独自の方法であり、2010年にこれを国際規格であるISO方式に改めていたのだった。

更にJIS方式では車体の右側には通常の右ネジを使用しているが、左側は回転力で緩む事を防止するために左ネジ(逆ネジ)が使用されていた。しかし、新ISO方式では全てが右ネジに統一されてしまった。

と言う事は、新ISO方式は車体左側のホイールナットが緩む可能性が大であるということだ。実際に新ISO方式が採用されてから、大型車のホイール脱落事故は増えていて、2011年度には11件であったものが、その後増加傾向が続き、2020年度には131件発生している。

とは言え、世界中で使われているのだから新ISO方式に欠陥があるとは言えない訳で、しかし旧JIS方式に慣れていると締め付けが甘くなってしまった、という事も十分に考えられる。

尤もクルマの整備ではネジの締め付けに関しては大型商用車は勿論、軽自動車でも全て整備説明書に記載された締め付けトルクを使用する事になっていて、締め付け作業には必ずトルクレンチという適正トルクで締め付ける工具を使用する事になっているのだが、これを手抜きして「感」で締め付けているケースは多いだろう。

対策としては、大型車のホイールは必ず規定トルクでの締め付けを行う事と、出発前の始業点検でホイールナットの緩みをチェックする事を徹底するしかない。