沈没した知床観光船のKAZUⅠは荒海には向かない仕様だったのか?
5月 2, 2022
今や話題の中心となっている知床観光船の沈没事故だが、事故を起こした「KAZU Ⅰ」は、実は40年近く前に建造された古い船で、しかも瀬戸内海の穏やかな内海を片道30分程の定期航路で使われていたという。
その時の船名は「ひかり8号」で、ほうらい汽船(現在は解散)という会社が運行していた事も既に判明している。
という事で、それではこの船は本当に荒海には向かないのかというと、事故当時から指摘されていたのは、気象条件の厳しい地域で使用するにしては客室の高さが高く横風の影響を受けやすい形状という事と、甲板の位置が水面に対して低く、しかも水が入った場合に簡単に配水できる構造では無いという事だ。
しかしKAZUⅠは2005年に今回の運用会社である「有限会社知床遊覧船」の所有となっていて、その後2015年には改造されている。知床遊覧船の経営が変わったのは2017年頃で、当時は5人の超ベテラン船長が在籍していたというから、波に弱くしかもボロい船を技術と経験で運行していたのだろう。
ところで、気象庁によると事故現場付近は風速16・4メートルに達していたといい、この強風で観光船を運航するなんて信じられない、という意見が多い。では、小型船はこの程度の強風では運行できないのかといえば、それは船の性能によるようだ。
参考に以下の動画を張り付けておくが、全長ではKAZUⅠ(全長12m)に近いフォンランド製のEXOPAR 37(全長11.5m)という船は15メートル前後の強風でも30ノットという高速でも余裕で航行し、更には40ノットに迫る速度で急旋回をしてもマルで安定している。
この2つの船の走行状態を比較してみると‥‥まあ比べちゃあいけないとは思うが、KAZUⅠは甲板が海面に近く、素人目で見ても横波でも喰らったら簡単に転覆しそうに見える。
因みにこのフィンランド製のEXOPAR 37は国外メーカーでは初の米国ボートオブザイヤーを受賞している。その事もあり、世界的に大変な人気で、今契約しても納船は2年後とかいう話だ。
ところで、EXOPAR 37は例外的に甲板が海面に近い設計だが、勿論対策はしてあるから成立するのだが、前述のようにKAZUⅠはEXOPAR 37よりも更に海面に近く、しかも排水対策をしているようにも思えない。
それでは一般的な小型船はどうなのだろうか、という事で、日本でもセレブに大人気の高級プレージャーボートのブランド、イタリアのアジム(Azimut)の最小モデルが40フィートだから約12ⅿでKAZUⅠと同等となる。
おおっと~っ、これまた比べるのが間違いだった。
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