観光バス横転事故車のブレーキは一部が溶けていた
10月 20, 2022
静岡県小山町の県道で13日発生した観光バス横転事故については、既に速報的に取り上げた。
⇒観光バス横転事故で専門家の意見が・・・
実はあのブログを書いた時期はメインのPCがトラブルによって画像処理が出来ないために、イマイチ判り辛かったと思う。そこで今回は、大型バスのブレーキについて、もう少し判りやすく説明する事から始めよう。
法律上の大型車といっても、タイヤのサイズが22.5インチと19.5インチが存在し、バスの場合は19.5インチは中型、22.5インチが大型と呼ばれているものだ。なお、これらのサイズはチューブレスタイヤの場合で、チューブ付きではそれぞれで、20インチと16インチとなる。今回の事故車は勿論大型観光バスだから22.5インチだが、実際のタイヤの映像を見るとチューブタイプの20インチのように見える。
現在22.5インチ用のブレーキはTBK社製の一択状態となっている。
乗用車と異なるのはディスクブレーキではなくドラムブレーキである事と、作動は油圧ではなくエアー(圧縮空気)であることだ。このため、ブレーキペダルは何なるエアーバルブであり、一応圧力のフィードバックを掛けてはいるが油圧ブレーキとは感覚が全く異なり、踏み具合で減速度を把握する事が難しい。
ペダルを踏んだことで圧縮空気はスプリングチャンバーという、油圧でいえばブレーキシリンダーに相当する部分に送られ、中のピストンが楔形の部品を引っ張る事でシューを広げてライニングがドラムを押す事でブレーキ力が発生する。
しかし単にブレーキチャンバーと言わないのは、強力なスプリングでブレーキを作動状態にしておき、タンクからの空気圧でこれを解除するという方式を採っている為だ。という事はエアタンクが空になるとスプリングブレーキが作動しブレーキを掛ける状態となる。加えてパーキングブレーキレバーを引いてもスプリングブレーキが作動するから、緊急ブレーキとしても使用できる。
なおこれは、パーキングブレーキとして使用する後輪の場合で、前輪にはスプリングブレーキの無いブレーキチャンバーを使用する。
という事は、フェードなどでブレーキユニット自体の効きが悪い状態、例えばフェードしている時にパーキングブレーキを作動させても、役に立たないという事だ。
さて実際の事故車両だが、報道によるとブレーキの一部が溶けていたというが、これはライニングが溶けていたという事だろうか?
この報道から、フェードしていた事は間違い無いだろう。
それにしても、そんな状態になるまでブレーキを使いすぎる何てぇ事は、いくらバスの経験が少ないとはいえ大型二種免許を所持しているドライバーとしてはあり得ないと思うのだが、最近はバスドライバーの質が落ちているという事だろうか?
そのエンジンブレーキに関して、中・大型商用車ではバス・トラック双方とも排気ブレーキが装着されている。その概念図は
要するに排気管を閉じることでエンジンの排圧が上がり、これが強力なエンジンブレーキとなるものだ。これについては下記のサイトに詳しく解説があるので、興味のある方は参照されたい。
⇒排気ブレーキの仕組み・使い方・修理方法【トラック補助ブレーキ解説】
なお、排気ブレーキよりも更に強力なリターダーという装置もあるが、コストが高い事などの問題もあり、普及はしていないのでは無いだろうか?
と、今回は結構マジに解説してみた。
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